第280章 まもなく首都へ行く

上村サラ 視点

夕暮れ時、私と中山さんはようやく彼のあの小さな建物へと戻った。

相変わらず水道も電気も通っていない。

薄暗い光を頼りに鏡を覗き込み、髪を束ねていたヘアゴムを外す。肩にどさりと落ちたボサボサの長髪はすっかり艶を失い、ほんのりとカビ臭さすら漂わせていた。

中山さんはキッチンでガスボンベを使い、お湯を沸かしている。

「今日はようやく温かいシャワーを浴びられるな」

お風呂! 今の私にとって、それは何日も飢え続けた人間が巨大なハンバーガーを目の前にしたようなもので、全身のすべての細胞が「欲しい」と叫んでいる。しかし、お風呂以上に今の私が切実に求めているのは、髪を洗うことだっ...

ログインして続きを読む