第58話臆病者

ライラ視点

イーサンの鋭く決定的な声が、夜の空気の中に漂った。テラスの雰囲気は一変し、二人の男の間で視線が交錯すると、そこには火花が散るような張り詰めた緊張が走った。私は二人の間に挟まれ、ダニエルのジャケットに包まれたまま、まるで古の決闘における戦利品にでもなったかのような気分だった。

イーサンは怒りを必死に抑えた表情で、大股に私たちの方へ歩み寄ってきた。無言のまま私に手を伸ばすと、肩にかかっていたダニエルのジャケットを掴んだ。

彼はあからさまな嫌悪感を込めてそれを剥ぎ取った。私と他の男を繋ぐその布切れ一枚でさえ、彼にとっては不愉快極まりないものだと言わんばかりに。彼はそれをダニエルに投...

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