第5章

家族との夕食が終わり、私は一人になる必要があった。

亮介の言葉が、心臓を高鳴らせる呪文のように、まだ頭の中で反響していた。「氷室玲華、彼女に私が授けた姓が、彼女の唯一のアイデンティティだ」。彼が私のために立ち上がってくれたあの瞬間、あの絶対的な庇護の感覚に、息が詰まりそうになった。

私は車を走らせ、一族が所有するプライベートな射撃場へと向かった。ここは静かで、詮索するような目や偽りの笑顔からも離れられる。内なる混沌を解放する必要があった。

バン!

十発目の弾丸が、寸分の狂いもなく的の中心を撃ち抜く。私は無表情な顔でグロック19を下ろした。その手は岩のようにびくともせず、微塵...

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