第3章
あの夜の対峙から戻って以来、私は一睡もできていない。それは恐怖のせいではない。煮えたぎるような怒りのせいだ。
リカルドの脅迫は、私にある一つの真実を悟らせた――逃げるだけでは何も解決しないのだと。彼は自らの手で決着をつけるまで、地の果てまで私を追いかけてくるだろう。
ならばいっそ、こちらから先手を打つべきではないか?
だがその前に、前世で一体何が起きたのか、その真相を突き止めなければならない……。
窓から差し込む月光が、書斎の静寂を鋭く切り裂く。私は指の節が白くなるほど強くティーカップを握りしめた。眠り? 今の私にとって、それは贅沢すぎる望みだ。瞼を閉じるたび、前世の悪夢が潮のように押し寄せてくるのだから。
「三年……」
私は呟いた。その声は、誰もいない書斎に酷く耳障りに響いた。
「地獄のような、丸三年間」
脳裏で、あの忌まわしい記憶が映画のフィルムのように巻き戻されていく――。
前世の私は、冷たい大理石の床に跪いていた。膝の感覚はとうに失せ、後ろ手に縛られた粗末な縄が手首に食い込み、皮が剥けて血が滲んでいた。
そして目の前に立つリカルドの瞳には、かつて存在したと信じていた愛など欠片もなく、あるのはただ、骨の髄まで凍りつくような嫌悪だけだった。
「一族を裏切った罪だ。安易に死なせてなどやるものか」
背筋が凍るほど冷酷な声だった。
「裏切ってなどいません!」
当時の私は必死に叫んだ。だが、泣き叫び続けた喉は枯れ果て、まるで壊れたふいごのような音しか出なかった。
しかし彼はただ嘲るように笑うと、革靴で私の顎を蹴り上げ、そのまま立ち去ったのだ。
その日から、私はサントロ一族の「完璧な妻」となった――ただ飾り物として置かれるだけの、夫からの温もりなど欠片も与えられない、生ける屍として。
彼は私が穢れていると言い放ち、寝所を共にすることを拒んだ。裏切り者の娘だと公然と罵り、私を辱めた。慈悲など一切なく、誰かと言葉を交わすことさえ、三言以上は許されなかった。
毎晩、夜明けまで彼の寝室のドアの前に跪かされた。「裏切り者にベッドで眠る資格などない」という理由で。膝は擦り切れ、癒えてはまた傷つくことを繰り返した。
親族の集まりがあるたび、彼は皆の前でこう言い放った。
「見ろ、これが裏切りの末路だ。だが私は慈悲深い――生かしておいてやっているのだからな」
三年。丸三年間だ。私は見世物の籠の鳥のように扱われ、早く死が訪れることだけを毎日祈っていた。
私を敵として扱いながら、完璧な妻であることを強要した。まるで、拷問を楽しむためだけにペットを飼うかのように。
手が震え出し、ティーカップがソーサーとぶつかって微かな音を立てた。記憶がナイフのように心を切り刻む。その一つ一つがあまりに鮮明で、息が詰まりそうだった。
その時、書斎のドアが静かに開いた。執事が革製の封筒を差し出す。
「お嬢様、ある方からこれをお渡しするようにと」
封筒を受け取り、中身を確認した瞬間、全身の血が凍りついた。
FBIとの接触記録だ。
前世と全く同じ証拠。紙の折り目までもが、完全に一致している。
「嘘……ありえない……」
食いしばった歯の隙間から、言葉が漏れた。
突然、携帯電話が鳴り響いた。父からだ。
「ビアンカ、今すぐ会議室へ来い」
恐ろしいほど冷徹な声だった。父はそれだけ言うと、一方的に通話を切った。
手元の証拠を見つめ、私の心は沈んでいった。これを受け取ったのは、私だけではなかったようだ。
コルレオーネー家の会議室は、窒息しそうなほどの緊張感に満ちていた。
父は蒼白な顔で、FBIとの接触記録をテーブルに激しく叩きつけた。
「ビアンカ、これを説明しろ」
問い詰めるような視線、失望の色が濃い口調――すべてが前世と全く同じだった。私はめまいがした。まるで悪夢の最深部へと、再び突き落とされたかのような感覚だった。
「そんな……ありえません、私は決して……」
私の声は震えていた。だが、それは恐怖からではない――煮えたぎるような怒りによるものだった。
「サントロ一族はすでに嗅ぎつけている。もしこれが事実なら……」
父の声には、明確な警告の色が滲んでいた。
同じ証拠、同じタイミング。奴らは前世のすべてを、ここで再現しようとしているのだ。
「もう十分です!」
私は勢いよく立ち上がった。その瞳には、かつてないほどの炎が宿っていた。
「こんな茶番はもうたくさんよ!」
父は驚いた様子を見せた。私からこれほど激しい反応が返ってくるとは、予想していなかったのだろう。
「茶番だと? ビアンカ、何を言っている?」
私は深く息を吸い込み、無理やり自分を落ち着かせた。マフィアの世界において、感情的になることは死を意味する。
「お父様、この件を処理するための時間をください」
「時間?」父は鼻で笑った。「サントロ一族が待ってくれるとでも思うのか?」
私の目は、鋼のように冷たく光った。
「ならば、来させておけばいいのです」
会議室を出ると、私はすぐにトニーへメッセージを送った。「いつもの場所で。急ぎだ」
ブルックリン埠頭の廃倉庫には、生臭い潮風が吹き込んでいた。
トニーは父の配下で最も忠実な古株だ。左の眉から口元にかけて走るナイフの傷跡が、彼をひときわ凶悪に見せている。だが、私を見るその目には、純粋な忠誠心だけが宿っていた。
「お嬢、命令してくれりゃいい。俺たちは従うだけだ」
「トニー、力を貸して」私の声は力強く、揺るぎないものだった。「誰かが私を嵌めようとしているの」
「どこのどいつだ?」トニーは反射的に腰の銃に手を伸ばした。
「まだ分からない。でも、必ず突き止める」
私の瞳に危険な光が宿る。
「あの証拠の本当の出所を探って。私たちの稼業じゃ、疑われること自体が死刑宣告と同じだから」
トニーは頷いた。「人数はどれくらい必要だ?」
「少なければ少ないほどいいわ。ファミリーには極秘で動きたいの」
今回こそは、ただ座して死を待つような真似はしない。向こうが汚い手を使ってくるなら、こちらも同じ手を使って対抗してみせる。
計画の詳細を詰めている最中、携帯が鳴った。画面には屋敷の番号が表示されている。
「お嬢様、すぐにお戻りください。来客です」執事の声は張り詰めていた。
「誰?」
「サントロ家の方々です」
私とトニーは顔を見合わせ、表情を曇らせた。
「早すぎる……」私は歯噛みした。「どうやら、戦争はもう始まっているみたいね」
私は急いで帰宅し、サントロ家の使者たちの相手をした――表向きは私の健康状態を気遣うふりをしているが、実際にはこちらの出方を探りに来た連中だ。私は終始冷静さを保ち、決して隙を見せなかった。
彼らが帰る頃には、すでに深夜になっていた。私はトニーが言っていた隠れ家へ向かい、いくつかの重要書類を確認する必要があった。
車を出そうとエンジンをかけた瞬間、助手席に白い封筒が置かれているのに気がついた。
心臓が止まりそうになった。
誰にも気づかれずに私の車に侵入できる人間など、限られている。まさか……。
震える手で封筒を破り開ける。中には一枚の紙が入っており、血のように赤い文字が書かれていた。
「小細工はやめろ。さもなくば惨たらしく死ぬことになる」
背筋が凍るのを感じた。
私が嗅ぎ回っていることを、奴らは知っている!
その事実に血の気が引いた。調査計画については、今日の午後トニーと話し合ったばかりだ。そして今夜、脅迫状が届いた。トニー以外に、私が証拠を洗い直そうとしていることを知る者はいないはずだ。
だが、トニーは十年以上も父に仕えてきた男だ。彼が裏切るはずがない。
だとすれば、答えは一つしかない――ファミリーの中に内通者がいる。しかも、私の動向を常時監視できるほど高い地位にいる人間が。
私は周囲を見回した。闇に沈む通りは静まり返っているが、物陰から無数の目が私の一挙手一投足を監視している気配を感じる。
「上等じゃない」
私は手紙をぐしゃりと握りつぶし、瞳に殺意を宿らせた。
「あくまでそのつもりなら、受けて立つわ」
私の命が欲しいなら、取りに来ればいい。今回は、こちらから攻め込ませてもらう。
