第七十一章

エイデン視点

僕はその髪の毛を拳の中で固く握りしめ、袖の中に手を滑り込ませた。シダーが僕を抱きしめてくれる温もりに包まれているのに、身体が不意にこわばる。どうしようもなかった。

「どうしたの、坊や?」彼女の声が耳元で優しく響く。

「な、なんでもない」と、僕はかろうじて言った。

僕はこれまで、自分の冷静さに誇りを持ってきた。父さんは、スターリング家の男はたとえ周りで高層ビルが崩れ落ちようとも、自制心を保つものだと言う。でも今、僕の心臓は捕らえられた鳥のように、肋骨の内側で激しく鼓動していた。

シダーのことが大好きだ。彼女の優しさは、何年も続いた冬の後の陽光のように感じられる。それなのに僕は...

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