チャプター 73

リドリー視点

廊下に出ると、すぐに張り詰めた空気を感じた。シダーは硬直した姿勢で立ち、デイジーは今にも泣き出しそうな様子だった――何度も見せられてきた芝居だ。

その茶番にはうんざりだった。デイジーの涙、俺の執務室に入れてもらえないという主張、アリアの容態についての必死の訴え。

驚いたのは、シダーの反応だった。デイジーの根性のなさと分不相応な野心を指摘する冷静な言葉は、その欺瞞を真っ向から切り裂いていた。デイジーがスターリング家の一員になるつもりはないとどもりながら否定したとき、シダーの仄かな皮肉は、ほとんど……新鮮でさえあった。

「もういい」俺はデイジーのパニックに満ちた弁解を遮った。...

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