チャプター 8
オリバー視点
見慣れないカーテンから陽光が差し込むシダーのアパートで、僕は目を覚ました。一瞬、混乱が頭をよぎったが、すぐに昨日の記憶が蘇ってきた。僕はさっと起き上がり、彼女の姿を探して部屋を見回した。
彼女はもう身支度を整えていた。パパの会社の偉い女性社員みたいなパンツスーツを着ていたけれど、その人たちよりずっと綺麗だった。髪はきちんと後ろでまとめられ、キッチンをてきぱきと動き回っている。
「おはよう、オリバー」僕が見ているのに気づくと、彼女は言った。「シリアルとオレンジジュース、用意したわよ」
僕は眠気をこするように目をこすり、キッチンテーブルへと歩み寄った。シリアルはストアブランドのもので、うちにあるようなオーガニックの輸入品ではなかったけれど、なぜかその方が美味しそうに見えた。
シダーは僕の隣にひざまずき、視線を合わせてきた。「オリバー、私、仕事に行かなくちゃ。もし何か食べたくなったら、カウンターにお金を置いておくから、それで注文してね」
胸が少し沈んだけど、僕は勇敢に頷いた。
彼女は一枚の小さな紙を僕に手渡した。「これが私の電話番号。何かあったら――本当に何でもいいから――すぐに電話して」
僕はまるで貴重な工芸品を受け取るかのように、その紙を敬虔な気持ちで受け取った。「うん、ママ。寂しくなっても電話していい？」
シダーの指が優しく僕の髪を梳いた。「ええ、もちろんよ」
僕はその感触に身を委ね、その瞬間を味わった。とても自然で、とてもしっくりくる感じがした。
ママは昨日、僕を送り返すって話をしなかったし、僕がママって呼んでも訂正しなかった。彼女は今、僕の母親としての役割に適応しようとしているみたいだ。素晴らしい！
「ママ……これからもそう呼んでいいよね？ ずっと？」僕は期待を込めて尋ねた。
「そうね、オリバー……」彼女は言葉を切り、表情を和らげた。「そう呼ぶことであなたが安心できるなら、私は構わないわ。それに、必要なだけここにいていいのよ。あなたのこと、ずいぶん気に入っちゃったんだから」
「それに、僕を無理やり帰したりしない？」僕は小さな声で尋ねた。
彼女はそっとため息をついた。「あなたの心の準備ができたら、ご家族に連絡するべきだとは思う。でも、いつか彼らがあなたを迎えに来たとしても、私たちは連絡を取り合うことができるわ。むしろ、そうしたいと思ってる」
僕の笑顔が少し曇った。期待していた答えとは少し違ったけれど、それでも何もないよりはましだ。少なくとも、彼女は僕を突き放そうとはしていない。
彼女が出かけた後、僕はその紙を丁寧に折りたたんでポケットに入れ、安全か確かめるように二度軽く叩いた。それから窓際に陣取り、彼女が通りの向こうに消えるまで見送った。
昨日は完璧な一日だった。僕はハンターに手伝ってもらった時のことを思い出して、微笑んだ。
「ハンター、お願いがあるんだ……」僕はスマートウォッチに囁きかけた。「ママを驚かせたいんだ」
「若様、それは規定違反で――」
「お願いだよ」僕は懇願した。「彼女を喜ばせたいんだ」
結局、ハンターは僕がアパートを片付け、夕食を届けるのを手伝ってくれた。ママが帰宅した時のあの表情を見れば、ハンターの不平不満もすべて報われた。
その後、彼女は自分のTシャツを一枚貸してくれた。「大きいだろうけど、服のまま寝るよりは快適だと思うわ」と彼女は言った。
僕はその柔らかい生地に顔を埋めた。「ママの匂いがする」
それに、寝る前のお話！ 彼女は三冊も本を読んでくれたんだ。家にいるベビーシッターみたいに一冊だけじゃなくて。エイデンは父さんと退屈な図表の話をするだけだったけど、僕にはママのハグとお話があった。
朝が昼に変わるにつれて、退屈が忍び寄ってきた。デザイン雑誌をぱらぱらめくったり、彼女の色鉛筆を色合い順に並べ替えたりしたけれど、彼女のことばかり考えてしまう。今、何をしているんだろう？ 僕のこと、恋しく思ってくれてるかな？
僕はスマートウォッチを持ち上げた。「ハンター、退屈だよ。ママがどこで働いてるか見に行きたい」
ハンターの慌てた声がはっきりと聞こえてきた。「若様、それは若様の存在が露見する危険を――」
「もしママが僕を必要としてたら？」僕は遮った。「もしママが困っていたら？ 僕が守らなきゃ。僕は彼女の息子なんだから」
「お父様の指示に真っ向から反する行為だぞ……」
僕はとっておきの武器を使った――ハンターが絶対に断れない、お願いの眼差しだ。「手伝ってくれないなら、一人で行く。ママの名刺に住所が書いてあったの、見たんだから」
ハンターは降参の証に、ため息をついた。「わかった。だが、くれぐれも内密に行動するんだぞ」
僕は一番きれいな服に着替えた。ハンターは変装用に帽子とサングラスを用意してくれるって約束してくれた。ライト・クリエイティブズへ向かうタクシーを手配する間、僕の心臓は興奮で高鳴っていた。仕事中のママに会えるんだ！
シダー視点
シカゴの高架鉄道に揺られ、車窓を流れる摩天楼を眺めながら、私は無意識に鞄の中にある書類の縁をなぞっていた。昨夜のデザイン展示会で耳にした、化粧室での会話がまだ頭から離れない。養父母が私をどう見ているか、その生々しい真実が。
ライト・クリエイティブズに着くと、私はまっすぐジョナサンのオフィスへ向かった。そこでは彼とエララが待っており、私がデスクに家族関係清算に関する法的書類一式を置くと、二人の表情は硬くなった。
「家族としての義務から解放されたいだと？」ジョナサンの声は事務的だった。「ならば、ウィルソン・グループの契約を取り返してこい。八百万ドル。それがお前の自由の値段だ」
エララの完璧な姿勢は崩れない。「公正な取引でしょう。私たちはあなたの教育に、キャリアに投資したわ。今度はあなたがこのプロジェクトで私たちに報いる番よ」
「今度こそ契約は取ります」私は平静を装って答えた。「ですが、自分の身体ではなく、デザインで」
エララの笑い声は乾いていた。「高潔なこと。その主義とやらが八百万ドルの価値があることを願うわ」
自席に戻り、私はゆっくりと息を吐いた。家族とは、ビジネス取引のように動くべきではない。愛情に請求書がついてくるはずがない。なのに私は今、まるで企業合併のように、自らの自由を交渉している。その事実は、奇妙なほどの明晰さと決意をもたらした――妥協ではなく、仕事によって独立を勝ち取るのだと。
私はウィルソン・プロジェクトの完成度を高めることに没頭した。シカゴの建築遺産と、持続可能な素材を融合させるのだ。
「これがライト社での最後の仕事。そして、最高の作品になる」私は画面のレンダリング画像にそう呟いた。
何時間も経った。同僚たちが帰宅し、オフィスの照明が変化していく中でも、私は集中し続けた。ようやく調整を終えたとき、満足感が全身に広がった。私はすべてをまとめ、洗練された黒のポートフォリオに収めた。
ちょうどその時、携帯が震え、メールの通知を知らせた。画面に目を落とすと、ウィルソン・グループの調達部長、エミリー・パーカーからの返信だった。彼女とは先月のシカゴ・デザイン・エキスポで少しだけ会ったことがあり、そのプロフェッショナルな姿勢に感銘を受けていた。
『ライト様
ご提案の基本コンセプトを拝見いたしました。つきましては、さらに詳しくお話しできればと存じます。本日午後七時、プレストン・ホテル412号室にてお会いできませんでしょうか。私自身、そこで会議がございまして、その前に少しお時間をいただければと。両社の利益を満たす共通点を見出せると信じております』
安堵感が押し寄せた。エミリーが関わってくれるなら話は別だ。彼女は公正で、純粋にデザインの価値だけを評価することで知られている。これこそ私が求めていた機会――作品を、その質だけで判断してくれる人物に披露するチャンスだ。
腕時計を確認し、プレストン・ホテルへ向かう車を呼んだ。この面会が私の進む道を決定づけるだろう。ライト家への隷属か、それとも、ついに手にする自由か。
エレベーターの中で、私は深呼吸を繰り返して精神を集中させた。「あなたならできる。自由のために」
412号室を見つけ、ノックしようと手を上げた瞬間、中から聞こえてきた音に凍りついた――聞き間違えようのない、喘ぎ声と叫び声。上げた手は宙で止まり、衝撃でその場に根が生えたように動けなくなった。引き返すべきか、進むべきか、判断がつかなかった。
