第52章

白石沙耶は口から出た言葉にすぐ後悔した。普段なら決してこんな風に話さないのに、明らかに美作アレンという奴に影響されてしまったのだ!

すでに口にした以上、取り消すことはできない。どうせ自分だって優しい性格ではないのだから。

ましてや、目の前のポーカーフェイスの持ち主も、善人とは思えない!

白石沙耶は二度と顔を上げなかった。見なくても想像できる、あのポーカーフェイスは今にも氷のように冷たく、瞳には鋭い光が宿っているに違いない。

うつむいたまま、足早にエレベーターから逃げ出した。

エレベーター内の男性は少し身を屈め、女性が衝突した西洋服の匂いを軽く嗅いだ。間違いない、柑橘系の香りだ。

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