第184章

その言葉を耳にした瞬間、安藤美咲の胸に浮かんだ感覚はひとつだけだった。――私は、もうとっくに安藤の人間じゃない。

今の私は、ひとりで立っている。だから、彼らの「楽しい」を同じ温度で感じることはできない。

傍らに控えていた使用人が、うやうやしく告げた。

「お嬢様、お爺様がお呼びです。書斎までご案内いたします」

美咲が今日ここへ来たのは、この人たちに会うためじゃない。おじいさんに言われたから――それだけ。

けれど、会いたいと思っていたのも本当で、美咲は小さくうなずいた。

「お願いします」

年配の使用人に導かれ、賑やかなホールを避けて二階へ上がる。向かった先は書斎だった。

使用人は...

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