第77章 安藤秘書

翌日、安藤美咲はまだ空が白むうちに家を出た。会社へは地下鉄で向かう。

かつて彼女は安藤家の長女だった。電車だのバスだの、そんなものに乗る必要なんてなかった。

けれどこの六年で、安藤家を出て――地下鉄も、路線バスも、自然と覚えた。

タクシーは滅多に使わない。お金が減るのが惜しいからだ。時間が進めば、支出も一緒に歩いていく。

朝の地下鉄はとにかく押し合いへし合いで、車内でもみくちゃにされて汗だくになったまま、七時五十分に到着。タイムカードを切り、最上階の社長室へ向かった。

秘書室の統括に挨拶するためだ。統括は昨日の時点で社長から連絡を受けており、自分のオフィスに机を一つ増やしていた。今...

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