第79章 彼を起こす

高橋裕也はもう食事を終えていて、腕時計にちらりと視線を落とした。

「俺、30分だけ休む。1時半になったら起こしてくれ」

そう言い残し、男は席を立って出ていく。

彼女はひとり、いちばん座り心地のいい席に腰を落ち着けたまま、料理を堪能した。

周囲からの視線がずっと肌に刺さる。振り向けば、さっ、とたんにみんな目を逸らし、まるで最初から見ていなかったみたいな顔をする。

安藤美咲は気にしないことにして、また箸を進めた。高橋グループの社員食堂は本当にレベルが高い。下手な高級ホテルより、よほど贅沢だ。

どの皿も当たりで、美味しい。そう思っていたところへ、向かいの席に誰かがすっと腰掛けた。

美...

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