第90章 パパ

 彼の言葉を聞いて、安藤美咲はふっと笑った。

「高橋社長、今日は本当に助けていただきました。ありがとうございます!」

 けれど高橋裕也は帰る気配がない。ソファに気だるげにもたれ、奥行きのある眼差しで美咲を見ていた。

「俺の恩、覚えとけ」

 安藤美咲は内心で身構える。――また、何か理由をつけてお金を取ろうとしてるんじゃ……?

 不安はある。けれど追い返すのも気が引けた。

 今の自分は、彼にぶら下がって食べているようなものだ。言うことを聞かなければ、彼が一声命じるだけで職を失う。

 美咲は絵里の掛け布団をそっと整え、それからベッド脇の椅子に腰を下ろした。娘の寝顔をじっと見つめる。

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