第7章

 二週間後のマンチェスター。雨は相変わらず冷たいが、私の心にもう陰りはない。

 私はカフェでマークと向かい合った。彼はいつもの見下すような視線で私を値踏みしている。捨てられて精神的に崩壊した女の姿を、期待しているのだろう。

「マリア、旅で頭は冷えたか?」

 マークはコーヒーを啜りながら、吐き気がするほど平坦な口調で言った。

「お前が俺なしじゃ生きていけないのは分かってる。ベッドで死んだ魚みたいなお前の相手なんて、俺以外に誰が務まるってんだ?」

 私は鼻で笑うと、トレンチコートの前をはだけた。露わになったのは黒いシルクのドレス。その皺の奥には、まだあの紫色の葡萄の染みが隠されている。...

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