第5章
俊の視点
「武藤様? 武藤様?」
岩本大地の声が鼓膜を叩き、俺は弾かれたように我に返った。
式場は不気味なほど静まり返っていた。参列者たちの視線が、一斉に俺へと注がれている。俺の答えを待っているのだ。美弥が俺の手を強く握りしめる。その爪が、皮膚に食い込むほどの強さで。
「……なんて言った?」
俺の声は、どこか現実味を欠いて上擦っていた。
胸の奥に、言葉にできない不安が澱んでいる。喉に何かがつかえて、飲み込むことも吐き出すこともできないような感覚。昨晩からずっとだ。正体不明の焦燥感が、脳裏にこびりついて離れない。
「西園寺美弥様を、生涯の伴侶とし、妻とすることを誓いますか...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
縮小
拡大
