112。罪深い罠

いい匂い……?

ああ、もう、何が起きているの?

ライラの心臓は、ルーカスの腕に捕らえられ、身動きできないまま、速く、絶え間なく鼓動していた。彼の胸から再び唸り声が響く――先ほどよりは低いが、それでも恐ろしい――その音に、彼女の手のひらは汗ばんだ。

殺される! 絶対に殺される!

彼女は目を固く閉じ、大君主の体躯の下で身をすくめた。

そして、間があった――何も起こらない。

「ライラ?」彼の低い声に、彼女ははっと目を開け、その深紅の瞳と視線が合った。

彼は素早く身を引き、その眼差しには困惑が揺れていた。

「怪我をさせたか?」と彼は尋ねた。

ライラはごくりと唾を飲み込み、首を横に振っ...

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