128。危険な取引

あと一撃。ライラの視線が、男の足首に吸い寄せられる。すぐさま短剣を引くと、その標的に向かって振り下ろしたが、ほんのわずかに逸れた。

戦士長は飛び退いたが、その前に手首と足に二つの切り傷を負っていた。あと一撃で試合に負けるという、危険な状態だ。

彼の血管が怒りで浮き上がった。

この娘……自分をまんまと騙したのだ。短剣は二本、一本は隠し持っていた。わざと弱々しく振る舞って油断させ、懐に潜り込んでから攻撃を仕掛けたのだ。

なんて狡猾な小娘だ。

顎が外れ、目が見開かれる。あまりに一瞬の出来事に、観衆が状況を理解するのに丸一分を要した。

彼女を疑っていた者たちは、あまりの衝撃に言葉も出ない。...

ログインして続きを読む