137。ただのゲーム

闇夜は美しかった。半月が皓々と輝き、その周りでは無数の星々がきらめいていた。

森を吹き抜ける涼やかな風に、木々が踊るように揺れていた。

セレーネは大きな木の一本に腰掛け、物思いに耽りながら空を見上げていた。その手の中の巻物を、彼女は強く握りしめる。

「これを届けるべきかしら?」彼女は独りごちた。自身にそう問いかけるのは、これで五度目だったが、まだ結論は出せずにいた。

アリアンナが女王になるまで待つべきだ。しかし、民には希望があること――まだ諦めてはいけないということを知らせる必要があった。

木の下に座っていたエリンドールが甲高い声を上げ、セレーネの注意を引いた。

「わかっているわ、エ...

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