176。裏切り

ファルコンが見張りを続けていると、ふと嫌な予感がした。主君様がメアリーナ様の住まいから戻られないまま、一時間近くが経つ。それだけでなく、警護にあたっている他の戦士たちの話し声も聞こえない。

静かすぎる。それが彼の心を乱した。

一番近くにいる戦士の様子を見に、彼は立ち上がった。アイラだ。彼女は警備区域の東側を見張る任についていた。

彼女がいるはずの大木へ向かったファルコンは、そこで意識を失って倒れている彼女を見つけ、愕然とした。

「アイラ?」彼は彼女に駆け寄った。顔は紅潮し、脈は弱まっている。薬だ。彼らを深い眠りに陥れるための何か。

俺が警告したにもかかわらず、オーウェンのスープを飲ん...

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