192。銀髪の女性

森の中を、ライラは全速力で駆けていた。だが、それでも足りない。背後からは、すでに完全な変身体となった兵士たちが迫ってくるのが聞こえる。

『ライラ。完全変身を。今すぐ』

「嫌」

『意地を張るな! やらなければ捕まるぞ!』

ライラはこれまで、ニクスに完全な支配権を渡すことを頑なに拒んできた。闘技場での最悪の戦いのさなかでさえ、彼女は一線を越えなかった。

『遺恨を抱えている場合か!』ニクスが咆哮した。

「……わかったわよ」ライラは不承不承、唸るように言った。

崖から跳躍し、空中で、彼女の身体がバキバキと音を立てて狼の姿へと変わっていく。骨が再形成され、毛皮が爆発的に生え出した。

四本...

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