220。君の宿敵

ヴァロレスは部屋に入り、腕に生まれたばかりの赤子を抱く母親の姿を目にした。彼女に仕えていた侍女たちは作業の手を止め、お辞儀をした。

彼は、ゆっくりと、慎重な足取りで近づいた。

「ご、ごきげんよう、閣下」イヴォンヌは震える声で挨拶した。

男は黙ったまま、母親の乳房に吸い付く赤子をじっと見つめていた。

「王の跡継ぎを産んだと聞いた」ヴァロレスは、赤子から視線をそらさずに言った。

「はい、閣下」彼女は答えた。

イヴォンヌは唾を飲み込んだ。指先が微かに震えたが、彼女はガーサの警告を思い出していた。もし嘘がばれたら、彼女も赤子も殺されるだろう。だが、いつまでこうして偽り続けられるのか?

「...

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