240。お願い、ダーリン

アリアンナはゆっくりとした足取りで獣に近づいた。その穏やかな足音が響くたび、獣の唸り声はわずかに――ほとんど誘うかのように――和らぐようだった。

怖くはなかった。彼だ。今も彼女の番であることに変わりはない。ただ、獣の姿をしているだけ。

こんなに間近で彼の姿を見るのは初めてだと、彼女は気づいた。ライカンは大きく、がっしりとした体躯でそびえ立ち、その肌は黒い毛皮で覆われている。爛々と輝く赤い両目が、飢えを宿して彼女を捉えていた。口元からは牙が剥き出しになっている。

彼の間近で立ち止まり、その顔に触れようと手を伸ばす。すると、彼の胸から低い喉鳴りが響いた。

「とても綺麗よ、アッシュ」彼女は柔...

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