54。彼の腕の中で

セレネと一人の治癒師がアリアナの世話を焼き、心地よい湯浴みをさせた後、彼女の状態をくまなく調べていた。

疲労困憊していることと、王に所有されたことを示す赤い痕以外、アリアナはまったくもって無事だった。

だが、セレネの心は落ち着かなかった。アリアナには今や竜の痕跡が宿っている――それは彼女と融合し、治癒の能力を与えつつあった。

セレネはアリアナの首筋に三日月の刻印が浮かび上がるのを目撃していた。それは現れては消える、を繰り返していた。

やがてアリアナの髪は銀色に変わり、三日月の刻印は消えることなく定着するだろうという兆候だった。

その過程が遅々として進まないのは、ひとえにアリアナの血管...

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