55。彼女の中の野獣

数分後、ナディアは俯きながら部屋に足を踏み入れた。薄いドレスを弄る指先、激しく脈打つ心臓。息は重く、速かった。

トランがゆっくりと、意図的に彼女に近づいてくる。ナディアは彼が目の前に来るまで、動かないよう必死に自分を律した。

「俺を見ろ」。彼は彼女の顎に手を伸ばし、無理やり上を向かせて視線を合わせさせる。彼の瞳には何の感情も宿っておらず、ナディアの瞳に渦巻く恐怖と交錯した。

「お前は物足りないな。俺は肉付きのいい女が好きなんだ」トランはそう言うと、指を彼女の唇から胸元へと滑らせた。「胸も大きい方が好みだ」と呟き、彼女の小さな胸に触れると、突然強く握りしめた。彼女は思わず声を上げて顔をしか...

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