64。ナディア

「お嬢様、本日はどこかへお出かけになりますか?」ナイラはアリアナの髪を梳かすのを手伝いながら尋ねた。

アリアナは自分でできると何度も言ったが、ナイラはそれを断った。王がアリアナの世話を万全にするよう命じたのだ、と。

「いいえ」アリアナは抑揚のない声で答え、その表情はどこか虚ろだった。「部屋にいるわ。一人で」

ナイラは鏡越しに彼女を見つめた。その顔には心配の色が浮かんでいる。

「お嬢様、何かお悩みですか? 気分が晴れるようなお話でもいたしましょうか」と、彼女は優しく提案した。

「ありがとう、ナイラ。でも、一人になりたいの」アリアナが丁寧にそう言うと、ナイラも引き下がり、黙って髪を梳かし...

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