72。囲まれた

「おやおや、これは誰かと思えば」山で見慣れた人影に気づいたトランは、口の端を耳まで吊り上げるような笑みを浮かべて近づいた。「アルファ・カエルじゃないか」

カエルはその視線を受け止めるように振り返り、顔に笑みが広がっていく。

「アルファ・トラン。これはこれは、大変光栄ですな」彼が差し出した手を、トランは握り返した。

「相変わらず素晴らしいお姿ですね、アルファ・トラン。そして戴冠おめでとうございます」カエルは顔を輝かせ、トランは軽く頷いた。

式典が始まろうとしており、二人はそちらへ視線を移した。新旧ほとんどのアルファたちが、挨拶を交わしている。

「いつか自分が本当にここに来られるなんて、...

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