98。最愛の人

鏡の前に座るアリアナの髪を、ナイラが優しく梳かしていた。

「お加減はいかがですか、アリアナ様?」

物思いに沈んでいたアリアナは、はっと我に返ると鏡越しに彼女と視線を合わせた。「私の、体調?」

「王が、あなた様は体調が優れないゆえ、お世話をするようにと仰せでした」とナイラは淀みなく答えた。

アリアナの顔がわずかに赤らんだ。「大丈夫……あの、たいしたことじゃないの」

彼女の心は、隣にダンカンがいて目覚めた朝のことに飛んでいた。一緒に朝食をとろうとしていた時、彼は何か用事を済ませてくると言って部屋を出る前に、サプライズがあると告げたのだ。

昨夜のことはまるで夢のようだったが、そのことで胸...

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