第159話重すぎる

その日の少しあと、気づけば私は彼の私室にいた。けれど、もうそこは「彼の部屋」とは呼べない気がした――彼がいないのだから。サルギスはついさっき、急用だと言って出ていった。私は何も訊かなかった。訊く必要もなかった。ついに王冠が彼を呼び、彼はそれに応えたのだ。

私はバルコニーの縁に腰を下ろし、膝をゆるく抱え込むように腕を回して、景色を見つめた。空は焦げた橙からくすんだ薄紫へとやわらかく滲みはじめ、長い影が大理石の欄干に伸びている。風がだらしない渦を描いてまとわりつき、ほどけた髪の束をくい、と引いた。

眼下には宮殿の庭が広く、空っぽに横たわっていた。笑い声も、裾を引くドレスの気配も、いたずらや対抗...

ログインして続きを読む