第164話酔った瞬間

ああ、神さま。わざわざドアのほうを向かなくてもよかった。来る。来ている。胸の奥で、一秒ごとが、遅く、逃れようのない太鼓の音みたいに数え落とされていくのがわかった。五……四……三……二……

一……

鋭いノックが音楽と笑い声を真っ二つに切り裂き、その一瞬だけ部屋の空気が凍りついた。

誰も反応する間もなく、リオラが――酔っ払いのくせにありがたいことに――前世でドアに侮辱でもされたみたいな勢いで飛びつき、芝居がかった所作で勢いよく開け放った。

心臓が跳ね、そして静まった。

だって、そこにいた。私の人が。

漆黒の服に身を包み、静かな支配だけをまとってその戸口に立つ姿。磨かれた黒曜石みたいに光を...

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