第200章ハスミク

「つまり……おれの愚かな可愛い弟が惚れ込んだ相手ってわけか」

喧騒を縫って滑り込んできた声が、煙のように私へ絡みついた。

その言葉は氷の蛇みたいに耳の奥へ忍び込み、血が凍りつくほど冷たかった。私は音のするほうへ身を翻し、全身の筋肉が張り詰めていくのがわかった。

そこに立っていたのは吸血鬼だった。目を血走らせて飢えたまま部屋を引き裂くように暴れ回る連中とは違う。こいつは、落ち着き払っている。彼が一歩近づくと、薄闇がその顔に刃のような輪郭を刻んだ。

残酷で、ほとんど美しいとさえ思ってしまうほど、目を奪われる容貌だった。角張った顎、白い肌が高い頬骨にぴんと張りつき、黒曜の水溜まりみたいな瞳は...

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