第36話麻薬を飲んでいる男のように

サルギス視点

その日の三通目の布告に封蝋を押している途中だった。指先には蝋がべったりとつき、汚れている。そこへ携帯が震えた。画面が灯り、ハスミクからの着信だと知れる。

思わず笑みがこぼれた。自分でも気づかぬうちに張り詰めていた緊張が、わずかにほどける。ナリネが出て行ってから、まだ三時間も経っていない。それなのに、この静けさはすでに永遠みたいに長く感じられた。会いたい。声が恋しい。眉をひそめるあの癖のある表情まで。

耳に携帯を押し当てる。「彼女に代われ」命じた。渋々浮かべる彼女の笑みが、もう頭の中に浮かんでいる。

「そうできたらいいんだけど、サルギス」

声に迷いが混じった。

「やめ...

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