第53話君が見える

ナリネ視点

彼にもたれて額を預けたとき、ようやく自分がどれほど必死に自分を保ってきたのかを思い知った。

そして――神さま、これは……正しい、と感じた。頬の下で彼の肩は広く、温かい。彼の匂いが、第二の肌みたいに私を包み込む。この本能、この引力を私はまだ完全には理解できていない。それでも、私はそれに従ってしまった。

キスのことだけじゃない。全部がそうだというわけでもない。引っかかっているのは、彼女がいとも簡単に彼に触れた、その容易さだった。

私には、こんなふうに感じる権利なんてない。

私たちはまだ結ばれていない。誓いも、約束も交わしていない。そもそも「彼の伴侶である」ということが何を意味...

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