第57話魅惑的な

ナリネ視点

朝七時を少し回ったころだった。陽の光がカーテン越しにやわらかく差し込み、壁を黄金色に染めていく。空気はみずみずしく、きりりと冷えている。けれど私は、その清々しさに身を委ねきれなかった。完全には。サルギスはすでに出ていた。南部国境の案件で自分の目が必要だとか、そんなことを言っていた。出がけに多くは語らず、小さくうなずいて、「正午までには戻る」と耳元で囁いただけ。そうして私の部屋へ朝食を運ばせるよう手配してから、去っていった。

そして今、私はひとりだった。

静けさが、眠たげな村へ霧が這い寄るみたいに、じわじわと押し寄せてくる。裸足のままスイートルームをさまよい、家具のビロードの縁...

ログインして続きを読む