第6章答えられた祈り

もう一度、目を開いた。今度は獣の研ぎ澄まされた感覚を呼び起こす。

世界が残酷なほどの鮮明さを帯びた。葉の一枚一枚、かすかな動きの気配、森の小動物たちの息づかい――それらすべてが、目に見え、耳に届く交響曲となる。数メートル先の枝にとまったリスの鼓動でさえ、太鼓のように耳の奥でどくんどくんと鳴った。

下では、雌狼たちが集まり始めていた。

彼女たちは一人、また一人と空き地へ入ってくる。神経の昂ぶりが、第二の皮膚みたいにまとわりついている。服の裾をいじる者もいれば、ひそひそと言葉を交わす者もいる。あるいは棒立ちのまま、落ち着かない目つきであたりを見回していた。

俺は一人残らず、細部まで見逃さないように観察した。視線で顔をなぞり、体の線を追い、些細な癖や不安の痙攣まで拾い上げる。つながりのかすかな兆し、見覚えの閃き、何でもいい――彼女がここにいると教えてくれるものを、ただひたすら求めて。

だが、何もない。

匂いが空気を満たしていく。花のように甘いもの、獣臭いもの、鋭く鼻を刺すもの。けれど、どれ一つとして俺を呼ばなかった。胸の奥の空洞に指を差し入れ、歌わせてくれる匂いは、どこにもない。

ゆっくり息を吐き、唇を細い線に結んだ。

また行き止まりだ。

ルペルクスに短いメッセージを打ち、車で落ち合うよう告げた。これ以上引き延ばす必要はない。ここでの用は済んだ。

スマホをポケットに戻し、枝から軽やかに飛び降りる。木から木へ、素早く滑らかに移っていった。すぐに戻る気にはなれない。

必要だったのだ……内側を噛み続ける絶望が膨らんでいくのを、ねじ伏せるための「間」が。

身体を本能に任せて跳び、着地し、慣れ親しんだ負荷が心を落ち着かせていくのを感じる。どこへ向かっているのかも分からないし、気にもならなかった。やがて、さらさらと流れる水の柔らかな旋律が耳に届くまでは。

その音を追った。気を逸らせることがありがたかった。

数分後、木々を抜けると川岸に出た。幅は広くないが流れは途切れず、月明かりが水面を銀の火の道みたいに踊っている。

端まで歩き、しゃがみ込み、指先を氷のような水に滑らせた。

冷たさが皮膚に噛みつき、胸の痛みがほんの少しだけ鈍る。

顔から仮面を外し、草の上にそっと置いた。

目を閉じ、星へ向けて顎を上げる。

「どこにいる……?」

闇に囁いても、森が返すのは沈黙だけだった。

サングラスを少しだけ押し下げ、縁の上から覗ける程度にして、滅多に許さない贅沢を自分に与える。ただ、見るという贅沢を。

夜空は頭上に広く、果てしなく横たわり、飾り気のない生の美しさで息を呑ませた。星々は、ビロードの天幕に散った小さなダイヤのようだ。……落ち着く。

こんな些細なことに目を留める余裕など、いつ以来だろう。至高のアルファであるということは、存在の一秒一秒が義務と期待と、容赦ない統率の摩耗に呑み込まれるということだ。星を眺めている暇などない。

目を閉じ、深く息を吸い――そして即座に後悔した。

凄まじい悪臭が鼻腔を殴った。腐り切った、むっとする臭気に胃がひっくり返りそうになる。嫌悪で鼻をしかめた。まったく、この群れは最悪に不潔だ。ジョーには制裁が必要だな――この無駄な捜索が終わったら対処する、と冷ややかに心のメモへ書き込む。

だが、そのとき、もう一度鼻がぴくりと動いた。

そして今度は、腐臭の下に、別のものが糸のように忍び込んできた。あまりにも澄んだ、あまりにも神々しい匂いのかすかな一筋。布を裂く刃のように穢れを切り裂いて、すいかずらと陽に温められた杉――甘く、土の気配を含み、濃密で、眩暈がするほど酩酊する香り。それが肺の奥へ強烈に打ち込まれ、膝が折れそうになった。

心臓が一拍、つまずく。次の瞬間、咆哮のように息を吹き返し、肋骨の内側を乱暴な律動で叩き始めた。

掌に湿り気が滲む。身体が強張り、全身の筋肉が、突然の電流じみた予感にきりきりと巻き上がる。

胸の奥で低い唸りが勝手に鳴った。獣が、ただ一つの灼けつく思考とともに前へ押し出される。

番だ。

自分が何をしているのか気づくより先に、俺は動いていた。

まず一歩。次にもう一歩。そして身体が弾け、匂いの源へ向かって無謀なほど一途に駆け出した。

森が周囲で滲む。枝が腕や脚を引っかいたが、感じもしない。

足元の地面が流れていく。俺は森を引き裂くように突き進み、すいかずらと杉の一筋を、憑かれた男のように追いかけた。

匂いは、焦る歩幅を重ねるたび、強く、濃く、いっそう抗いがたくなっていく。

絹の縄のように感覚へ絡みつき、森の心臓部へと俺を引きずり込む。そして息をするたび、鼓動するたび、何年も抱えてきた俺の内側の大きな空洞――無視できると思い込んでいたそれが、彼女を求めてさらに大きく叫び声を上げた。

俺はもっと速く走った。やがて木々が開け、別の空き地の縁で滑り込むように急停止する。目の前の影を見つめた瞬間、恐怖で目が見開かれ、全身が凍りついたまま動けなくなった。

それは、ひどく歪み、引き裂かれた化け物のように見えた。歩く骸骨――ただし皮膚が脆い骨にかろうじて縋りつき、夜の冷たい口づけの下でふらつきながら立っている。

視線を引き剥がし、周囲を探ると、恐慌が胸を爪で掻きむしった。ここは……スノーウルフの本拠地からは外れている。それでも、群れの縄張りの内側だった。

顔を勢いよく戻した瞬間、相手が目を上げ、こちらと視線がぶつかった。

鋼のような灰色……。世界がぐらりと傾ぎ、頭の中の花火が一斉に爆ぜた。

伴侶だ。

身体が勝手に動いた。長く必死の歩幅で距離を詰める。解きほぐしようもない感情の嵐に突き動かされて――混乱、怒り、悲しみ、焦燥、そして骨の髄まで沁みるような圧倒的安堵。

誰だ?

何者だ?

彼女に何があった?

問いが荒波のように頭蓋を叩いた。だが、ようやく辿り着いたときに突きつけられた残酷な現実に備えることなど、何ひとつできていなかった。あの食欲をそそるスイカズラとシダーの細い香りは、いまや彼女のか細い身体にまとわりつく腐臭にほとんど掻き消されている。彼女の目前、あと数インチのところで足が止まった。心臓の鼓動があまりに大きく、世界の音を塗り潰すほどだった。もう一度、視線が絡む。俺の温かな茶色と、彼女の鋭い灰色。次の瞬間、彼女は乾いた骨の袋みたいに前へ崩れ、まっすぐ俺の腕の中へ倒れ込んできた。裸のまま。

喉の奥が詰まるような声が漏れ、俺は彼女を受け止めた。できる限りやさしく胸に抱き寄せる。泥も、汚れも、臭いも、どうでもよかった。

見えているのは彼女だけだ。感じるのは、魂の底からの確信――彼女は俺のものだ、ということだけ。

長い睫毛が落ち窪んだ頬をかすめ、髪は背中に絡まり合ったまま垂れ下がっている。

怒りと罪悪感で喉が焼けた。

どこから来た? 誰がこんなことを? 俺が別の場所を探して無駄にしていた間、どれだけ苦しんだ?

自己嫌悪が内側から喰らいついてくる。

俺は彼女を慎重に抱え、車を待たせている幹線道路へ戻った。

林の縁を抜けると、ルペルクスがボンネットにもたれて怠そうにしており、ジョーがそばで落ち着かなく足を入れ替えていた。

俺を見るなり、二人とも背筋を伸ばしたが、すぐに顔をしかめて後ずさりし、反射的に鼻をつまんだ。

「失礼ですが……いったい何をしてるんです? 死体なんか抱えて」ルペルクスが思わず吐き出し、さらに身を引いた。

その言葉が、すでに擦り切れていた俺の短気を切り裂いた。

俺は殺意じみた睨みを叩きつけた。夜そのものが震えたように感じるほどの。

「もう一度言ってみろ」俺は唸るように言った。

ルペルクスは青ざめ、すぐに頭を垂れて服従の姿勢を取る。

「申し訳ありません、殿下。そんなつもりでは……」

「つもりなんてどうでもいい」冷たく遮った。「ドアを開けろ。出るぞ。俺の伴侶には助けが必要だ」

彼はそれ以上何も言わず、慌てて従い、後部座席のドアを大きく開け放った。

俺は彼女をそっと座席に横たえ、夜気から少しでも守ろうと身体で庇う。フード付きの上着を脱ぎ、丁寧に彼女へ掛け、繭のように包み込むように端を押し込んだ。

彼女が安全だと確かめてから、俺はジョーへ振り向いた。

哀れな男の言い訳そのもの。二歩で間合いを詰め、喉を掴み、地面からすっと持ち上げる。

「至高のアルファ……お願いします……」ジョーが喘いだ。

「お前がやったのか?」俺は唸り、胸の内に辛うじて押し込めた怒りで声が震えた。

彼は震え、目を見開いて怯えている。

「今夜は時間を惜しむんだ、子犬」俺はシッと吐き、指にわずかに力を足して息を詰まらせた。「だが、よく聞け、ジョー。これで終わりじゃない」

俺は彼を引き寄せ、鼻先が触れそうな距離まで近づける。

「呼び出す。調べ上げる。そして、もし――もしお前が、ほんの少しでも、彼女の苦しみに関わっていたと分かったら……」

身を寄せ、声を地獄すら凍らせる囁きに落とす。

「お前の家族を消し去る。お前自身の震える手で、可愛い奥さんと大事なガキどもを殺させてやる。そしてな、ジョー……それから……お前だけは生かしておく。惨めな生の終わりまで、あいつらの悲鳴を何度でも思い出せるようにな」

咆哮とともに、俺はジョーを人形みたいに空き地の向こうへ投げ飛ばした。彼は鈍く嫌な音を立てて木に叩きつけられ、そのまま地面へ崩れ落ち、動かなくなった。

振り返りもせず、俺は車へ戻り、後部座席に乗り込むと、揺れから守るように彼女の繊細な頭を膝へ引き寄せた。

ルペルクスがドアを叩きつけ、アクセルを踏み抜く。タイヤがアスファルトを引き裂く悲鳴を上げ、俺たちは宮殿へ向かって闇の道を疾走した。

俺は彼女の痣のある額から汚れた髪の束をそっと払った。壊れてしまった身体を抱き締めながら――自分にこんな優しさが眠っていたことなど知らなかった、そのすべてで。

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