第77話十分じゃなかった

サルギス視点

どうやってここへ来たのか、覚えていなかった。

ほんの一瞬前まで、私はただ闇雲に走っていた。動き続けてさえいれば、頭蓋の内にこだまする彼女の声を――その残響を――追い抜けるかもしれない、そんなふうに。

「あなたの伴侶になりたいなんて、一度も思ったことない」

「心地よかったから、そばにいただけ」

「もう二度と、あなたに会いたくない」

「拒絶する」

その言葉が、血の中に呪いのように絡みついて、何度も何度も再生された。走れば走るほど、かえって大きくなる。やがてそれは、頭の中だけのものではなくなっていった……どこにでもあった。木々の間に。風のうねりに。かつて心臓が打っていたはずの、...

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