第84話彼女のような女の子には向いていない

サルギス視点

部屋は薄暗かった。カーテンは月明かりを遮るようにきつく引かれ、光といえば手元の携帯端末の画面と、目の前にある半分ほど残ったバーボンの瓶が反射する鈍い艶だけだった。

俺は客用ベッドの縁に腰を下ろしていた。幽霊みたいに、半分だけ服を着て、半分だけ正気で。グラスをふたたび唇へ運ぶ指先が、小刻みに震える。

それでも……画面を閉じることができなかった。待ち受けが、俺を見返してくる。

ナリネ。

枕に頬を寄せた寝顔。まつげが扇のように頬に影を落とし、髪は乱れて、唇はわずかに開いている。

変えられなかった。変えたくなかった。

喪失のなかで自分が呼び出した幻みたいに、俺は彼女を見つめ...

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