第87話恋する男

サルギス視点

やらないと、自分に言い聞かせた。

彼女が望んだとおり、放っておくのだと。

もう二度と探さないのだと。

近くに配置した衛兵たちがいれば十分だ、距離が俺たち二人を守ってくれる――そう思い込もうとした。

だが、それは嘘だった。彼女がいない日々を生き延びるために、俺は自分にいくつもの嘘を重ねた。

平気だ、と。

彼女なしでも生きていける、と。

そして、この……近づいている舞踏会、仮面と選択で彩られた王家の劇場など、ただの務めに過ぎないのだ、と。

もしかすると、しばらくは本当に信じていたのかもしれない。

だが気づけば、俺は彼女の職場の前に立ち、彼女を見張っていた。

彼女は俺に気づかな...

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