第94話覚悟ができていたかどうか

宮殿は息をのむほど美しかった。黄金の松明が階段に沿ってゆらめき、頭上では幾千もの灯籠が宙に浮かんで、白大理石と鏡張りの窓にやわらかな光を落としている。ヴァイオリン、ハープ、ピアノ――音楽が空気に溶け、豪奢なドレスと仮面の人々がすでに入口へとなだれ込み、磨き上げられた完璧さと、抑えきれない緊張にきらめいていた。

「入らなくてもいいんだよ」ユレンがやさしく言い、横目でこちらをうかがった。

「入る」私は囁いた。

「どうして突然この道を選んだのか、正直まだよくわからない。君が考えや気持ちを率直に口にするのが苦手なのも知っている。だけど、彼がそれに見合う相手であることを、そして今感じている不快さに...

ログインして続きを読む