第4章
古川の言葉を、これまでに起きたすべてと突き合わせるように、頭の中が猛烈な勢いで回転していた。
雨をぬぐうと、アパート群の向こうにそびえ立つ巨大な鉄の構造物が目に入った。
市営の給水塔。
それを見上げた瞬間、ようやく腑に落ちた。
日曜の朝。あの分厚い黒い喪のヴェールが、頬をいつまでもちくちくと擦ってくる。
日曜の礼拝――町の連中が、週に一度の例の「浄化」なる儀式のために集まる時間だ。
私は満員の神社の中、中央の列の中ほどに座っていた。
古川が芽依を守っていることを確認してから、私はここへ来た。最悪の悪夢を確かめるために。
柔らかなオルガンの音が流れ、町の人々は立ち、座り、祈り、まるで一つの生き物みたいに完璧に呼吸を揃えていた。
祭壇の前で、町長が銀色のカートを中央通路に押し出してくる。
「隣人の皆さん、魂を清めなさい」
町長はそう唱えながら、小さな紙コップの水を配っていった。
「飲んで、浄化されなさい」
私にもコップが回ってきた。中の透明な液体を見つめる。
ヴェールの端をわずかに持ち上げ、コップを口元へ。たった一滴だけ、舌に触れさせた。
甘ったるくて不快な化学薬品の味が口いっぱいに広がる。胃が激しく拒絶した。厚手のハンカチを唇に押し当て、布越しに咳き込み、口の中の水を全部吐き出した。
下半分の顔をハンカチで隠したまま、隣に座る年配の女性を観察する。
彼女はコップの水を一息で飲み干した。
次の瞬間、身体が完全に硬直した。瞳孔が、針の穴みたいな小さな黒点に縮む。周囲を見回す。前方の長椅子では胸が上下し、三十人分の肺が、まったく同じ不気味なリズムで膨らんではしぼんでいた。
――何、これ?
脈が喉を叩く。私はコートのポケットに手を入れ、芽依の写真を取り出した。骨董品店で撮った、あの写真。青白い肌の上に、ルビーのチョーカーが横たわっている。
指先の力を抜くと、写真はひらりと床板へ落ち、年配の女性の実用的な靴のすぐ脇に着地した。
彼女が瞬きをする。固定されたような目が、私の娘と、あの呪われた首飾りの画像へと落ちる。
「そのチョーカー、とてもきれいね」
彼女は囁いた。
「誰が、この子に着けたの?」
「私よ」
私は静かに答えた。境界線を試すように。
「私が着けたの」
反応は即座だった。
彼女の顎が乱暴に噛み合い、賛美歌集が手から落ちた。
「悪魔の母親!」
唾を飛ばして叫び、彼女は飛びかかってきた。骨ばった指が私のコートをかきむしる。
「お前が着けたんだな! 汚らわしい、不自然な女め!」
隣の男が首を鞭みたいに回してこちらを向いた。告白を聞いた途端、固定された瞳が私に突き刺さる。彼の頭の中でも、何かの引き金が折れたのだ。彼も叫び声に加わり、私の肩を、痣ができるほどの万力で掴んだ。
――水だ。水が下地で、告白が引き金。だが、なぜこんな大掛かりな集団投薬までして、狙いが私だけなんだ?
騒ぎが会衆を乱す。人々が振り返った。
もみ合う腕の隙間越しに、私の視線が前列の長椅子へ激しくぶつかった。
大輔。
彼は狼狽して振り返ったりしない。ただ肩をわずかに動かして、騒動を見返した。その膝にほとんど乗るように座り、胸を彼の腕に押しつけているのは――桜子だった。
夫と、親友。二人の指は自然に絡み合い、桜子の膝の上で重なっている。
二人には紙コップがなかった。瞳孔も固定されていない。完全に、しらふだった。
桜子が大輔の耳元に何か囁く。顔を傾けた拍子に、神社の灯りが彼女の耳たぶを照らした。
何もない。ダイヤの涙型のピアスが片方、消えている。
「こいつよ!」
年配の女が私の顔を乱暴に引き、黒いヴェールを引き裂くように剥ぎ取った。
会衆に、私の顔が晒される。
「母親だ! 保安官を呼べ! この女を縛りつけろ!」
神社が爆発したように沸騰した。何十人もの人間が木の長椅子を乗り越え、顔を怒りの仮面に歪めながら、私を引き裂こうと殺到してくる。
私は最後に一度だけ、大輔を見た。
前列から、彼は私を見下ろしていた。十年間知っていた完璧で愛情深い夫が、ゆっくりと、背筋の凍るような薄笑いを浮かべる。勝ったつもりなのだ。私が追い詰められ、精神病棟へ送られ、彼が私の信託財産を吸い尽くせると。
地獄へ直行するのは誰かって? 私じゃない。
私は体重を落とし、目の前の重い木の長椅子にブーツを踏ん張って、全力で押し出した。
巨大なベンチが後ろへ倒れ、狂った女と叫ぶ男へ激突して、床に押し潰すように縫い留めた。
振り返らない。私は脇の通路へ飛び出した。
「逃がすな!」
祭壇から、村上町長の怒号が飛ぶ。
背後で足音が轟く。手がコートに伸び、布をかすめていく。私は神社の側面の出口へ全身をぶつけた。金属のバーが折れるように外れた。
凍てつく空気が顔面を叩く。
神社の裏手では、市営の川が、昨夜の嵐で増水し、灰色のギザギザした岩の上を荒々しく流れ落ちていた。
背後で神社の扉が破裂するように開く。
「足を掴め!」
迷っている暇はない。私は石の手すりを飛び越え、そのまま凍える激流へ身を投げた。
氷みたいな水が全身を呑み込み、私を引きずり込む。岸辺から遠ざかるにつれ、狂乱の叫び声が薄れていく。私は急流に身を任せた。
肺が焼けるように痛い。だが、頭は冴えわたっていた。
試験は終わった。あとは、動かぬ証拠を掴むだけだ。
