第3章

病院の廊下を照らす無影灯が、あらゆる感情の影すらも消し去ろうとしているかのようだった。笹原沙耶香は救急処置室の診察台に横たわり、医療スタッフの忙しない足音を、まるで遠い世界の響きのように聞いていた。血圧計のマンシェットが腕をきつく締め付け、規則的な収縮音を立てている。

「笹原さん、バイタルは安定していますが、念のため精密検査を行います」若い救急医が、感情を排した事務的な口調で告げた。

【攻略終了日まで、いかなる医療検査でも異常は発見されません。システムが契約者の身体状態を調整し、表面的な安定を維持します】

沙耶香は静かに頷き、医師の肩越しに、慌てて駆けつけてくる上野誠一の姿を捉...

ログインして続きを読む