第6章

現実世界に戻ってから、私の日常は凪いだ海のように静かだった。

あれほど饒舌だったルビーも、今では気配を潜めている。そんなある日、彼女が悪戯っぽく囁いた。「面白いものを見せてあげる」——その声に導かれ、私の意識は再び、あの因果の世界へと引き寄せられた。

目に映ったのは、桜が祝福するように咲き誇る、屋外の結婚式会場。招待客は皆、華やかな正装に身を包み、春のそよ風が淡いピンクの花びらを祝福の紙吹雪のように舞わせている。

私が死んで、季節も巡らぬうちに、上野誠一は河野千春と結婚したのだ。

壇上の二人は、幸福の絶頂を演じていた。仕立ての良いタキシードに身を包んだ誠一。桜色の豪奢なウェ...

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