チャプター 268

ニコライ視点

小さな部屋はひどく暑かった。いや、あるいは内側から俺を焼き尽くさんばかりの緊張のせいか。とにかく、ひどく暑かった。エリーがくれたスウェットシャツを脱いだ。たぶん彼女の父親のクローゼットから持ってきたものだろう。それを畳んで、脇に置いた。

俺は煮込んでいたスープの作業を続けた。細部にまで注意を払いながら――おそらく、注意を払いすぎながら。

ヘルブリンガー・パウダーを匙で計り直し、昨晩頭の中で描いた手順を思い出そうと努めた。

「お前、そいつを計るのはもう三回目だぞ」と、オリオンが呟いた。「さっさと入れちまえ。もし効かなくても、試せる野生の狼は他に十一匹もいるんだからな」

俺...

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