チャプター 288

ニコライ視点

俺はもう、自分が誰なのか、どこにいるのか、何のために存在するのかもわからない。

しばらく前からずっと、現実からかけ離れた場所にいた。

だが突然、何かが、誰かが、俺を求めて叫び始めた。

その言葉は聞き取れなかったが、永遠にも思える時間の中で、初めて俺に目的ができた。

誰なのかもわからないのに、彼女の声が好きだった。

それに、今俺を支配している主(マスター)よりも、いい主人になってくれそうだった。今の主は、飯もくれないし、いつも俺の意識を奪うばかりだ。

彼女が望むことをしようと必死になるほど、主もまたそれをさせまいと抵抗した。

だが、俺はあの女性(ひと)が望むことをし...

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