第104章

石川春の口ぶりからして「氷室先生」といえば、悠の実の父親以外にあり得なかった。

篠は思わず固まる。車内の空気までひやりとして、背筋がぞわついた。

――氷室涼介が、わたしに何の用?

「姉ちゃん、聞いた話だと氷室先生って筋が通っててさ。変な関係とか受けつけないタイプなんだろ? さっき向こうのリビングで大見得切ったあの台詞、聞かれてたんじゃない?」

篠はごくりと唾を飲み込む。「だからって、ここで待ち伏せするほどじゃないでしょ?」

「今どき、成人男女が一回寝るくらい普通じゃない?」

莉々「…………姉ちゃん、世間は姉ちゃんじゃないの」

「都野和広、何の用か聞いてきてよ」

篠は運転席の背...

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