第32章

「直樹の車に仕込まれてる発信機よ。あなた、欲しいんじゃない?」

画面に表示された文面を見つめた篠の目が、すっと翳る。

顔を上げ、不二雪枝をひと睨みした。

「一応、言っといてあげようか。犯罪だけど」

「あなたが仕掛けたんじゃないんだから、何が犯罪なのよ」

「警察に知られたところで、私と直樹の痴話揉めで済む話でしょ。あなたには何の関係もないじゃない」

本当なら不二雪枝だって自分で動きたかった。だが芸能界は底なし沼だ。下手を打てば、誰かの罠にそのまま嵌められかねない。

篠を頼るのが、結局いちばん確実だった。

あの女に子供でも産まれたらどうなる。

息子が受け継ぐはずの財産を、半分も...

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