第48章

「奥様、こんにちは」

「こんにちは」

篠が黒のニットワンピース姿で法律事務所に現れた瞬間、所内の空気がぱっと華やいだ。誰もが思わず目を向ける。

「氷室弁護士は?」

「ただいま会議中です」

「はあ……」

篠はあからさまにうんざりした。会いに来れば不在、いても会議中。ほんとうに面倒な男だ。

「もうすぐ終わります! 呼んでまいりますね……」

そう言って駆けていったのは、秘書課に入ったばかりの新人らしい女の子だった。篠と氷室弁護士の間に何かある――そんな噂に、すっかり夢中になっているらしい。

清純派の女優と、法曹界の腹黒い大物。

最近読んだ恋愛小説そのままじゃないか――とでも思っ...

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