第51章

「不二さんにとって、誠実って何だ?」

篠は悠に片手で扉へ押さえつけられたまま、怪訝そうに彼を見上げた。

「氷室弁護士、誠実って何?」

「口にしたことは必ず守る。やると言ったことはやり切る。それが誠実だ」

悠は一語ずつ噛みしめるように言った。

篠は鼻で笑う。

「そんなこと、現実で何人できるわけ?」

「ベッドに入るときはあんなに甘いこと言っといて、終わったら何食わぬ顔で他人になる。みんなそうでしょ」

篠は小さいころから、父親に染められてきた。

ろくでもない女になったのも、無理はない。

昔、父親の愛人が大きなお腹を抱えて家まで乗り込んできて、責任を取れと言ったことがあった。あの...

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