第61章

行広睦子が駆けつけてきた。全身、砂埃まみれでいかにも慌ただしい。

篠のそばまで寄るなり、睦子は掌をひらひらと扇いで露骨に顔をしかめる。

「二人で来るんじゃなかったの?」東風彰二がその様子を見て、思わず口を挟んだ。

篠が舌打ちする。「本当は一緒に来るはずだったんだけどさ——こいつが——」

「はいはい、黙って」睦子は篠がのんびり言い出した時点で、ろくでもないことしか言わないと察していた。伸ばした手で、その口をふさぐ。

「篠」

じゃれ合っている三人のところへ、不二百合子が黒い旗袍姿で現れた。篠のそれが“アレンジ”の効いたデザインなのに対し、百合子のは古式ゆかしい正統派。比べれば篠のほう...

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