第69章

「うわ……」

「篠、マジで容赦ねえな!」

「やるときは情け一切なしってか」

「隣にいるの、悠じゃね?」

和也の顔は血の気が引いて、青黒くなる。わかっていた。篠は今日、最初から自分を逃がす気がない。大勢の前で、裸同然のまま外へ放り出すつもりだ。

周囲の野次馬が好き勝手に囁き合う声が、耳に刺さる。和也の表情はどんどん沈み、そして――「悠」という名前が出た瞬間、ぴたりと止まった。

篠の向こう。少し離れた椅子に腰掛け、煙草を挟んでいる男が見える。

黒のオーダースーツをきっちり着こなしながら、背もたれにだらりと身を預けている。なのに、纏う空気は怠さとは真逆だ。冷たく、強く、揺るがない。財...

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