第74章

三人で食べながら話しているうちに、食事が終わる頃にはもう二時間以上が過ぎていた。

店を出る前、田中が「今日は雨だ」と念を押してくれたのに、篠はたいして気にも留めなかった。

店先に立ち、ざあざあと叩きつけるような大雨を見上げた瞬間、篠の顔が曇る。

視線を落として自分の靴を見た。限定品のハイヒール。今日が初おろしだというのに、このままじゃ一発で台無しじゃない?

黒崎星矢は、篠のその仕草に気づいた。

「車から傘を取ってきます。少し待っていてください」

店の入口から駐車場までは少し距離がある。黒崎星矢は店員に傘を一本借り、くるりと踵を返して雨の幕へと踏み出した。

雨の中を進む男の広い背...

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