第79章

悠は善人の類じゃない。

帝都じゃ、彼にまつわる噂が港の海水みたいにいくらでもある。

篠はようやく気づいた。自分は、手を出しちゃいけない相手にちょっかいをかけたのだと。

じりじりと距離を詰めてくる男を見上げ、顔色を失ったまま後ずさる。

「不二さんに言っておきたい。最初から俺は、あなたの味方だった。けど不二さんは……どうにも要領が悪い」

今日こっちを弄んだと思ったら、明日は別の誰か――そんな篠の気質は、悠にはどうにも受け入れがたい。

あっちへふらふら、こっちへふらふら。飽きっぽくて移り気な癖は、いつか誰かにねじ曲げられる。

篠は悟った。悠は、彼女の「やり方」が気に入らないのだ。

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